稀記

坂口美紅です。

誰も入ってこないのに片付けないと叱られる年末

前の晩、睡魔に負けて温かい靴下を探さずに布団へ入った夜の後迎える朝、

目を覚ますと、自分の足先が温まっている事に気付く。

凄い幸福感、

 

私の足、温かい。

静かに擦り合わせる同じ温度の右足と左足。

もそもそと動かしても冷たいところが無い布団の中。

冬だけ使う毛布の肌触り。

糸が緩み切った朝

 

静かな窓の向こうはきっとガラスの世界だ。

 

 

夜、雪の降り始めは「気のせい」から始まる。

視界の隅で何かが一つ落ちる。

薄手の手袋では太刀打ち出来ず、狭い手袋の中で手をグーにする。

 

視界の隅で何かが一つ落ちる。

どこまでも声が届いてしまいそうな寒さ、

 

視界の隅で何かがまた一つ二つと落ちる。

視線を少し遠くにやると、

 

視界の隅々まで音もなくゆらゆらと降り広がる雪。

 

闇の中を、音もなく、気のせいに化けて既に踊っていた。

 

街灯の近くでは姿を現すので、見上げて、ボーッと見つめる。

 

ピッタリと肌にくっ着く寒さを振り落とそうと先程まで足を早めていたのに、

 

降ってしまえばゆっくりと、遠回りをして帰ろうと思う。雪が降れば寒さを受け入れてしまう不思議。

 

昔遊んでいた公園、いつもは外を通るが、

真ん中を突っ切ってみる。

霜が降りた落ち葉は、歩く度にシャクシャクと音を立てる。

 

 

冬の夜は広く静かに裾を広げて

今晩起こる事や音を、一つづつ記憶していく

 

 

今日は大晦日

晦日のうち、年内一番最後になる晦日

今日の夜 24時からは新しい一年を数え始める。あなたも、私も、皆も

 

仕切り直す、考え直す、

何かをしなおすには持ってこいの一日を迎える。

明日の朝も、なんてこと無く寒いくせに、

いつもと何も変わらないくせに、

 

それでも、

区切りとは良いものだと思わされる。

何かが始まる気がしてしまう、

必要なんだ人には区切りが、

恋人には記念日が

働くものには祝日が

 

 

さ、今晩何チャンネルで年を越すか考えなくちゃね

 

皆様、良いお年をお迎え下さい。


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